九鬼神伝保存顕彰会では、九鬼神伝天真兵法(通称:九鬼神流)の演武と伝習会を定期的に行っている。

  「演武」は、毎年夏に和歌山県東牟婁郡本宮町に鎮座まします熊野本宮大社の御前に於いて行っている。また、有縁の神に対する奉納として、平成16年(2004)年秋には江戸時代に九鬼家が藩主を勤めていた京都綾部市で伝習会を催した翌日に、同市の若宮神社に鎮座まします九鬼霊社の御前でも行じた。

  「伝習会」は、諸方の有志によるかねてからの要請に応じて、門外からの参加者を受け入れ、平成16年(2004)4月から開始した。一般的なセミナー形式とは違い、あくまでも古流の伝統に則った正式な伝授と稽古方式に基づき、厳粛に行われるものである。

  「伝習会」という名称は、王陽明の『伝習録』に基づく。その内容は、伝授と温習の各要素を併せ持つ。出稽古という形式を用いるため、時宜に応じて開催地を決めるのであるが、現在は、春に名古屋、夏に奈良県吉野郡十津川村で行い、秋には綾部、またはその他の有縁の地に於いて行っている。


  九鬼神伝天真兵とは、その昔、宮中の神祇を司った中臣氏(藤原氏)を祖とする九鬼家に伝わる神伝の武術であり、「九鬼神流」としてその名が知られている。所謂「天真の伝」を踏まえるが故に、天真兵法と称するものである。

 流祖は熊野別当家道有の子として生まれた九鬼薬師丸髏^。大職冠藤原鎌足より数えて第三十六代の末裔である。南北朝の戦いに於いて、後醍醐天皇の窮地を御救い奉った功を賞され九鬼姓を賜った。この時に家伝の武術(藤原夢想流と伝えられる)と神法秘伝および密教秘法を以て編み出されたのが当流の基を成している。

 九鬼家は、戦国時代に熊野水軍(九鬼水軍)として名を轟かせた鳥羽城主の九鬼嘉隆公を輩出し、江戸時代には綾部藩と三田藩の大名と成り、近世に至って播州加古川高御位神宮に於いて皇道宣揚会を発足、中臣神道・熊野修験道と共に九鬼家の武術を振興した。現在は紀州熊野本宮大社宮司家であられる。

 九鬼神伝天真兵法は、この九鬼家を宗家と仰ぎ、師範家において古式に則り現今に継承されている。體術(柔術)・棒術(六尺棒・半棒・短棒)・劔法・薙刀・鎗術・投剱術・鉄板投術・鉄扇術などを伝える総合武術であり、更に軍略や多くの秘伝を有している。これらは、九鬼家所伝の中臣神道・熊野修験道と密接な関連を有しており、その深奥なる理法は人類により築かれた極めて貴重な叡智の結晶という可きである。

 ところが、南朝方の武藝であることや、また九鬼嘉隆公が西軍に属していたことによって、九鬼家が綾部に移封された江戸時代には徳川家に遠慮して表立った動きを憚(はばか)り、一時、宗家である九鬼家を離れ、師範家において秘密裏に伝えられてきたとう経緯があり、当に幻の武藝と謂わねばならない。


 今日では、此の流名を知る人も多くなってきた。然し、その驚くべき深奥なる秘伝を真に知る人が、どれほどいるであろうか
 九鬼家の神伝の保存顕彰に努め、九鬼神流を伝えている九鬼神伝保存顕彰会では、これまで師範家において守り続けてきた伝統的な伝授形式を今後も貫くことは、宗家・九鬼家に対する責務であり、また、日本の伝統文化が失われつつある現代において却って重要であると考え、敢えて門戸を拡げなかった向きがあったことは否めないであろう。

 しかし、真の武藝を真摯に求める者には道が開かれるべきである。そのような道心の有る人に対して、何とか門戸を広げたいという気持ちから、あくまでも伝統を遵守しつつ、九鬼家所伝の神伝を挙揚・顕彰することを専らの趣旨として、古来他流でもしばしば行われた出稽古の形式を用いることとして、満を持して門外者を受け入れる伝習会の開催に踏み切ることとなった。これが伝習会の開催に至る経緯とその趣旨である。



 九鬼神伝保存顕彰会による伝習会は、このように、日頃、同流派に対して興味をもちつつも、遠隔地に住しているなどで、なかなか稽古に参加する条件がそろわずにいる有志を対象として行われている。年に2-3回ほどの割合で、そのときの要望に応じて各地で行っていく。これまでの参加者には、海外からの参加者もおられ、一流を担う師範や上位クラスの方も少なくない。しかし、もちろん真摯に古道を希求しておられる方であれば、初心者は寧ろ大歓迎である。
 伝習会への参加には、事前に個人のプロフィールを添えた申し込みと、その後の緊密な連絡を必要とする。現在において他流門派に属している方は、参加を申し込む前に、必ず御自分の師匠、および当該責任者や周囲の方々と充分に相談の上、許可・同意を得ていることが参加の条件となる。これは御自分の師や所属の流儀に対する最低限の礼として心得ていただきたい。また、如何なる武歴を有しておられる方であっても、当流においては伝授階梯の最も初歩より始めていただく。これは日本古来の礼であると共に、流儀を正しく伝えていく為のならわしなので、御諒承願う次第である。



九鬼~傳天眞兵法「傳習會」 開催要旨

開催趣旨:

 伝習会は、同時に伝授・温習・稽古の三つの要素を合わせ持ち、古くからしばしば行われていた謂わゆる"出稽古"(他所に出向いて稽古をすること)と同様、時宜に応じて各地で開催しています。

 九鬼家所伝の神伝武術の技法と流派の背景をなした神道秘伝、及び天真伝の教え−煉丹法−の鼓吹・顕彰を趣旨とし、あくまで古流の伝統に則った正式な伝授と稽古方式をもって、真の武藝を真摯に求める道心有る諸氏を対象に厳粛に行われるものであります。

 なお、参加に際しては、他流門派に於いて如何なる武歴を有している方におかれましても、例外無く伝授階梯の最も初歩より稽古を始めていただくことになります。 ─無論、その後の進度において個人差は有るでしょうが─ これは、武門の礼儀であると共に、流儀が正しく完全に伝授される為に設けられた古来よりの仕来たりですので、御諒承ください。

主催:

九鬼神伝保存顕彰会

参加費

  講師の交通費実費+謝礼 (※事前にお尋ねください)
  参加当日に徴集。

持ち物:

(1)

稽古着

(2)

六尺棒(お持ちの方は極力持参してください)

六尺棒をお持ちでない方は、別途、注文も受け付けています。
お申し込みの際にメール等でお知らせください。

内容:

1.  九鬼神流 體術

2.  九鬼神流 棒術

3.  九鬼神流 演武

 體術棒術・半棒術劔法薙刀術、その他

4. 講義 ( 高怏b直 )
    
九鬼神流の思想および歴史・九鬼神流の技の特徴・その他

5. 質疑応答

伝習会規

伝習会への参加にあたり、次のことを遵守してください。

現在、日本の武道の他流門派に属している方、および他の道場で学んでいる方は、伝習会への参加に先立ち、必ず前以て自身の師か当該責任者の承諾を得てください。

教伝された内容は、許可無く他所で教えてはいけません。

身体に傷害などがある場合は必ず事前に申し出てください。

いたずらに技を競い合い、人を中傷するなどの争いごとは一切禁止します。

伝習会開催期間中における本人の不注意による事故・怪我等については、自己の責任において処理してください。

その他、師範并びに世話役の指示に従ってください。

申し込み方法:
  下記の内容を記入し、電子メール等でお申し込みください。


     私は伝習会規に則り、九鬼神伝保存顕彰会主催の伝習会に
     参加することを希望します。

    (1)氏名
    (2)年齢
    (3)性別
    (4)生年月日
    (5)連絡先(住所・電話番号・FAX番号・電子メールアドレス等)
    (6)武歴
    (7)六尺棒の注文 申し込む/申し込まない 
      * いずれかに○を付けてください。

    (メッセージが有れば、ここに記入してください。)


◆ 申込み・連絡先:

 その他、不明な点が有りましたら、お気軽にメールでお尋ねください。


    日本語用メールアドレス

    英文による案内と申し込みフォーム
       (当道場門弟・Scott Laking 氏のサイトが窓口です)






次回の伝習会の開催予定は
九鬼神伝公式ホームページを
ご参照ください


詳細は下記「九鬼神伝公式ホームページ」行事と活動の項をご参照ください。

お問合せは、九鬼神伝保存顕彰会事務局までメールをお寄せください。

九鬼神伝公式ホームページ


文・吉田叡禮